息苦しい…そもそも呼吸って?…の巻!
COPD を罹患している方の多くが抱える「息苦しい…」という症状。
以前、呼吸器内科の先生からCOPDの終末期について「誰か空気を…と苦しそうに訴えられますが、出来ることは限られています。」という話を聞いて、絶対にタバコは吸わない!と心に誓ったことが忘れられません。
息苦しいってどういうこと?そもそも呼吸って?…
『医師ともっと話せるようになるための臨床医学知識』
より ”呼吸器の仕組みを理解する” の部分を読み返し、まとめてみました( ..)φ
◆呼吸の過程
①換気…気体が気道を介して外界と肺胞の間で移動すること
外気が気道を通って肺胞に到達し、その逆に血液中のCO₂は肺胞から気道を通って気道を通って体外に出ていく
②拡散…O₂、CO₂が肺胞と肺毛細血管の間で濃度(分圧)勾配によって移動すること
肺胞⇒血管 O₂移動は濃度(分圧)勾配を利用している
③運搬…O₂、CO₂が血流によって肺と末梢組織の間で移動すること
血管⇒末梢組織 O₂移動も拡散を利用している
★O₂濃度:外界>肺胞>血管>末梢組織
呼吸はこのすべてが連携していないと成立しないため、O₂不足で呼吸が苦しいということはこの3つのうちのどこかが破綻しているということになる!!
例)細菌性肺炎…拡散障害(肺実質の炎症によりO₂拡散ができない)
喘息発作(重症)…換気障害(気道炎症による閉塞で低換気になる)
COPD…換気障害(気道炎症による閉塞で低換気になる)
貧血…運搬障害(ヘモグロビンの低下により血液のO₂運搬能が低下する)
肺塞栓症…運搬障害(肺動脈の閉塞が血流を障害してO₂運搬を妨げる)
うっ血性心不全…拡散障害(肺うっ血による血管から肺胞へ水が浸出しO₂拡散を妨げる)
間質性肺炎…拡散障害(間質の炎症によりO₂拡散が妨げられる)
気道閉塞…換気障害(異物や浮腫による閉塞が低換気を起こす)
ショック…運搬障害(血管拡張や大量出血による血流低下がO₂運搬能を低下させる)
一酸化炭素中毒…運搬障害(HbがCO₂と結合するためO₂運搬能が低下する)
◆CO₂蓄積の有無
CO₂はO₂より約20倍拡散しやすい
呼吸不全によりCO₂が蓄積する原因は「換気障害」(COPD、気道閉塞)
CO₂蓄積ナシ=I型呼吸不全 CO₂蓄積あり=Ⅱ型呼吸不全
●PaCO₂(動脈血二酸化炭素分圧) 40±5Torrより高い場合はCO₂蓄積あり
→拡散障害や運搬障害はない(肺炎、肺塞栓症はない)
★COPDはCO₂が蓄積したⅡ型呼吸不全
◆呼吸のコントロール
随意的呼吸(深呼吸、水泳時) 大脳皮質⇒呼吸中枢⇒呼吸筋
不随意呼吸(睡眠時) CO₂…延髄 中枢化学受容体
O₂…頸動脈小体や大動脈小体の末梢化学受容体
通常はCO₂モニターが優位(CO₂が軽度に体内にたまると呼吸する)
★COPDは換気障害でCO₂が吐き出せず常にCO₂分圧が高い状態になっており、呼吸中枢がCO₂を指標にして不随意呼吸を制御できなくなる
→変動モニターがO₂モニターに切り替わっているため、呼吸不全でO₂投与を急速に行い、不随意呼吸をコントロールしていたO₂モニターがO₂が充足していると判断して機能しなくなり、呼吸が抑制される
さらにCO₂が溜まってしまうと、CO₂ナルコーシスという病態になる。
CO₂には麻酔作用があり、高濃度になると頭痛、意識障害、呼吸回数減少と進んでいき死に繋がっていく。
◆胸水と肺水腫
胸水…胸膜腔に通常の漿液量を超えて水が溜まっている状態
量が多いと肺が押されてしぼんでしまうが肺の外側の問題なので少量であれば経過観察することもある。
肺水腫…肺胞の中に水が染み出てきて水がたまる状態
拡散障害となり呼吸不全に原因となる(うっ血性心不全)
◆COPD患者と消費カロリー
COPD患者はうまく吐けなくてはいないの残気量が増え、横隔膜と外肋間筋では十分空気を取り込むことができないため、通常、深い呼吸のときにしか使用しない胸鎖乳突筋を使う。(外観でわかるほど発達していることあり)
吸気=呼吸筋の収縮(ATPを消費)呼気=呼吸筋の収縮(エネルギー消費は極少量)だが、COPD患者は吐くのに苦労することで通常よりエネルギー消費が高くなり、通常の1.2~1.5倍くらいカロリー消費が増えてしまう。
COPDでは、肺が過膨張となり胃を圧迫して食欲低下、食事の呼吸の乱れや誤嚥のため食欲低下し痩せてしまう。
なるほど…普段意識せず行っている呼吸…生きていくために必須であり、体の中で上手にコントロールされていることがよくわかりました。
COPDという病態により、そのバランスが崩れることでいろいろな不都合が起きてくる…
病気が進行しないように吸入をしっかりと継続する必要性もきちんと伝えていきたいと思います(*^^*)